環境地図トークイベントを開催しました!/ Environmental Map Talk Event Held!

12月15日に環境地図トークイベントをオンラインで開催しました。

トークイベントは今回で3回目ですが、今年は日本とマカオの小中高生14組が地図づくりの魅力や環境地図作品で工夫した点などを発表してくれました。

当日紹介できなかった発表への講評をまとめます。

環境地図トークイベント2024 ~14組の小中高生が語る~
研究会スタッフより

12月15日に行われた『環境地図トークイベント』において,素晴らしい発表をしてくださった発表者のみなさんに敬意を表し,研究会スタッフよりメッセージを贈ります。

第1部 小学生 講評:福田 行高(環境地図教育研究会副会長)

 今回も小学生の作品の水準は高く,審査員をうならせました。
さて,水越さん兄弟の作品は,絵地図の見本のように,楽しみながら描いた様子が目に浮かびます。神社の狛犬まで動物に見立てて,ユーモアいっぱいです。
 髙橋さんは毎年応募されています。等高線で山を描いていますが,ていねいに下書きをして拡大されていることもあって地形図より見て分かりやすいです。
 鶴沢さん兄弟は4年連続の応募ですね。地図のテーマが社会科の内容に変化して,作品を通して気持ちを社会にアピールしています。
 鈴木さんの作品は,身近な地域で昆虫を調べるのにとどまらず,そこから発展して町ごとの公園数までまとめています。内容が濃いです。

第2部 中学生 講評:大野 新(環境地図教育研究会幹事)

 みなさんそれぞれに,地図づくりの工夫とこれから作品に取り組む方々へのメッセージを発表に入れてくださって,大変参考になったと思います。
 太田さんは暗渠となっている河川を追いかけるために,区立図書館を活用して,いろいろな資料を集められました。資料収集を行う前の準備の大切さがわかりました。
 平井さんは初めての参加ということもあり,テーマは身近なものにするとよいことを力説されていました。「一にも二にもフィールドワーク」という言葉から現場を見ることの大切さが伝わりました。
 竹下さんは,これまでの経験をまとめてくださって,事前調査→地理的調査→詳細調査と地図づくりの流れも示してくださいました。地図を大きく表すことの重要性や図表を有効に使うことなどをアピールされていました。
 今回は,海外マカオからの発表もありました。何 芯柔(ホーサムイアオ)・李 文悦(レイマンユツ)・李 穎怡(レイウェンイ)・郭 恩羽(クウオクアンユー)さんの「Survive the Catastrophe」では,マカオの災害対策と避難センター,人口分布,高潮の影響などについて発表がありました。マカオには15の避難所があり,市民の安全を確保するために設置されていますが,避難所の分布が均等ではないという指摘がありました。海に面しているマカオでは日本と同じように,高潮などの自然災害の危険性があり,避難所などの情報が重要であることがわかりました。
 次に,阮 雅淳(ユン ンガースウン)・邱 洛瑤(ヤオロユ)・柳 雅雯(ラオンガーマン)・黃 卓淇(ウオンチャクケイ)さんたちが作成した「Macao Market Marvels:An Insightful Exploration」では,マカオの商業施設の状況が発表され,伝統的な市場とショッピングセンターでは,若い世代がショッピングセンターを好む傾向があることが報告され,伝統的な市場の認知度向上の必要性が示唆されました。
 また,来年もみなさんからの力作の応募を待っています。発表者のみなさんありがとうございました。

第3部 高校生 講評:小野寺 徹(環境地図教育研究会顧問)

①「環境地図作成における地域取材の有用性」三浦弘奈さん
 三浦さんの作品「ラジオ体操に行こう!」は,専門家や地域の人々へのインタビューを積極的に取り入れた内容となっており,街頭インタビューと一対一インタビューそれぞれのメリットとデメリットについて丁寧に説明してくださいました。取材方法に関する詳細なプレゼンテーションは,今後の調査活動において非常に参考になる内容だったと思います。また,旭川西高校では課題発見フィールドワークで「問いを立てる」訓練を行った上で探究学習に取り組んでいる点から,今後環境地図作成をする班が登場することを大いに期待しています。
②「台東区をFrance化〜ウォーカブルシティへ」川久保美怜さん
 地方創生において,海外の先進事例から学ぶべきことは多くあります。川久保さんが訪れたパリと台東区の共通点に着目し,ウォーカブルシティや15分都市構想を基に「フランス化する地図」を作成しようとした点は非常に素晴らしい視点だと思います。また,自分の住む地域について,レーダーチャートを活用して現状を評価し,さらにウォーカブルなまちづくりへの提案を行った点も高く評価できます。これからもさまざまな国や地域を訪れ,五感を駆使して地域を深く理解する視点を養っていってください。
③「スーパーマーケットの営業時間と規模の関係」内川敬太郎さん
 内川さんの作品は,スーパーの営業時間,駐車場の数,駅までの最短距離などを地道に調査し,そこからしっかりと考察を行った点が素晴らしいと思います。駅近と郊外におけるターゲット層やスーパーのタイプの違いに気づき,それに基づいた新たな提案をしている点にも感心しました。また,調査結果を踏まえた考察の中で,「駅から離れるほど営業終了時間が早い傾向がある」という一般的な認識に反し,実際には駅近のスーパーよりも終了時間が遅いケースについて,大きな道路沿いにあり交通量が多いことが影響しているのではないかと推測した点は,鋭い観察力を感じさせます。さらに,内川さんは環境地図作りの魅力について4点挙げていました。情報の視覚化が容易であること,現地調査での意外な発見,考察の面白さ,そして得られた結果や考察が日常生活に役立つ点です。どの点も非常に興味深く,環境地図作りの可能性を広げる内容でした。
④「江戸時代にタイムスリップー四ツ谷の谷がつなぐ今と昔」井原沙綾さん
 井原さんの作品は,四ツ谷の四つの谷の高低差を切り口に,江戸時代と現代をつなぐ視点を提示しており,まるでブラタモリの特集になりそうな大変興味深い内容でした。谷の下層部において,江戸時代には町人や職人の住居があり,現在ではマンションや住宅,商店街へと姿を変えている点を指摘し,さらに雨水調整池やマンホール蓋など,谷による洪水対策が行われている現状についても詳しく触れています。また,江戸時代から継続している土地利用が,火災などの災害時には危険を伴う可能性があるという課題を鋭く指摘している点も印象的でした。このような興味深いテーマや調査結果を,さまざまな媒体を通じて多くの人に発信することで,地域の魅力や課題についての理解が深まると思います。ぜひ積極的に発信していただきたいです。
⑤「埼玉県内最古の駅にお茶場ックス現る!?-高校生が創る未来地図-」林瑠花さん
 林さんがこれまで作られた作品には,「狭山茶が有名なのはなぜか,狭山市の気候と風土から考える」(2021)や「ジョンソン基地(アメリカ)が後生(日本)にもたらしたものは」(2022)がありますね。そして今回の作品は,それらをさらに超える内容でした。駅開発に伴う若い世代の移住によって人口分布がどのように変化するのか,また住民の年齢層が若くなり,まちの発展と活性化を促進するために必要な施策を考え,それを地図上に表現しています。特に,色覚多様性への配慮や模式図・フローチャートなどの図表の挿入,ロゴマークへのこだわりが印象的でした。また,正確な調査を行うために早朝から現地を歩いて確認し,2648軒を調査したことや,未来を見据えて移り変わりのタイミングを15年後と設定した点など,表現方法や調査方法に多くの工夫が施されており,地図を見るだけで内容が直感的に理解できる仕上がりになっています。さらに,これまでの3作品が狭山の「現在を知り」「昔を知り」「未来を創造する」というテーマに基づいて作られていることに感銘を受けました。それを通じて,林さん自身が地域の理解を深め,愛着を持つに至ったというお話は非常に印象的です。また,環境地図作品展の会場に足を運び,他の作品から学び続けたことや,地図作りの経験値を高めてきた努力が,今回の最高賞受賞につながったのだと思います。

トークイベントでは、地図づくりで工夫した点など、参加者同士活発な意見交換が行われました。

トークイベントの模様は、1月7日までYouTubeで公開してます!

発表者の皆さん、参加してくださった皆さん、ありがとうございました。